Girl's Play
鋼の神経と詠われた森次玲二も、さすがにこの状況には戸惑っていた。
自分の目の前、というより、自分の上には全裸の少女。
いや、正確には『人間の少女のかたちを取っているもの』なのだが、かたちの良い胸から自分の腿にぺったりと押しつけられている性器まで、その細部にわたって再現されているのは、いっそ感心するより他にない。
・・・そこで感心する神経からしておかしいのだが、そのことに森次は気づかない。
「私も、何かした方がいいのか？」
とりあえずそう聞いてみると、森次に乗り上げた『少女』大場真来梓はにっこりと満面の笑みを浮かべて見せた。
「全部、私にやらせてくれたら嬉しいですｖ」
「そうか」
相棒であるヴァーダントも、桐山によくけしかけられるプリテンダーも、こちらの反応を悦ぶ割にはこちらからのアクションはあまり求めない。
恐らく、マキナというものはそういう傾向があるのだろうと、全く役に立たない仮説を立てて、森次玲二は、遠慮なくマグロになることに、決めた。
「やっぱり、森次隊長はキレイですねｖ」
少々意外なほど巧いキスの後。
そんなことを言いながら、するすると胸を撫でてくる指は、マキナのケーブルより、男の指より滑らかで柔らかい。
やはり、女性の肌は肌理が細かくて柔らかいな。
この状況でそんなことを思う彼の神経は、とことん鈍くできている。
しかし、体は。
とことん、敏感に、できている。
「ふ・・・・っ」
「あ、気持ちいいですか？」
小さな喘ぎを見逃さず、にこにこと嬉しそうな少女は、じゃあ、もっとｖ、と呟いて。
そのとたん、慣れた感触が、一斉にずるりと全身を這った。
それは、間違いなく、マキナのナノマシン移植ケーブル。
彼女の本質を思えば不思議ではないが、彼女の形態を見れば、いったいどこから、と思わずにはいられない。
「・・・それは、どうなっているんだ？」
純粋な好奇心でそう聞いてみると、真来梓はくねくねと身をよじらせて、高い声を上げた。
「ああん、私のコト、知りたいんですか！？」
ヒトマキナといえど、マキナが元であるならば、ファクターが必要でなくともこういったケーブルの類が残存していてもおかしくない訳か。
そう結論づけたところで、腹に乗っていた少女の腰が浮いて、柔らかな指が膝を押し開いた。
そうして。
下肢を行き来していたケーブルの一つが、く、とナカに侵入ってくるのが、わかった。
「・・・っ」
「わあv隊長の中、あっつーいvv」
やはり、ケーブルはマキシの感覚と直結しているらしい。
彼女は大喜びで、森次の中をかき回す。
「っ、ふぅ・・・・っ」
森次の体を知り尽くしたヴァーダントとも、やはりよく知った桐山と繋がっているプリテンダーとも違う。
目の前の少女の個性のままの、遠慮も加減もない動きに柔らかな襞を翻弄されて、森次は与えられる感覚のまま喘いだ。
「気持ちいいですか？じゃ、もっとｖ」
はしゃいだ声とともに、入り口への圧迫が強くなった。
まずいな、と思うと同時に、何の躊躇いもなく、二本目のケーブルが侵入してきて。
「っ！」
中への刺激ばかりで、まだ十分に柔らかくなっていなかったそこがふつりと切れ、少量の体液が溢れたのがわかった。
「わあっ！ごめんなさい！！」
真来梓が、文字通り顔色を変えた。
「いや・・・・」
そんなところまで『ヒト』なのか、と、むしろ興味深く観察していた森次は、ただ、緩慢に首を振った。
「私は、痛覚がないからな。問題ない」
「え」
とたん、今度は顔色も表情も変わり、ケーブルや柔らかな手のひらが、今まで以上に無遠慮に、先ほどの創傷や体表面、内側の粘膜を探りまわった。
「どうなってるんですか！？」
「んっ・・・」
その刺激に小さく呻き、まずかったか、と、森次はひとりごちた。
再会後、桐山に半ば解剖まがいの行為をされたことは、記憶に新しい。
痛みはなくとも、ゆっくりと肉や骨、内蔵を切り開かれる感覚は気持ち悪いものだし、呼吸器系を傷つけられれば苦しいのだ。
好奇心旺盛で常識の通じない相手は、始末が悪い。
しかし、彼女はそこまでの『ヒトデナシ』ではなかったらしい。
「ああっ、ごめんなさい！」
謝罪の言葉とともに、ずる、と、傷ついたそこから、２本目のケーブルが抜かれるのがわかった。
そうして、そこにぬるりと熱く濡れた感触。少女は、舌まで柔らかい。
そこまでしなくても、と思ったところで、脚の間から、唇に血を付けた真来梓が、にっこりと少女らしく可愛らしい笑顔を上げて言った。
「でも、痛くないんなら、いっぱいしても大丈夫ですねｖ」
「・・・・・」
それはそれで、感じやすい体にはしんどい話なのだが、森次は沈黙を貫いた。
ここでどうこう言おうが言うまいが、事態に変化はないと、よくよく理解してのことだった。
十分に慣らせば、この太さのケーブルなら２、３本は余裕なのだが、真来梓は早々に２本目を入れるのを諦めたらしい。
その代わり、先に入ったそれを縦横無尽に動かして、感じるところを探り当て、確実に森次を攻め上げていく。
「あ・・・あは・・・っ」
女のような喘ぎ声が、勝手に出てきて喉をついた。
体の奥が勝手に中のものを締め付けて、そのたびにまた感じては喘ぐを繰り返す。
そうして、そのたびに少女は、喜色を露わに森次の顔をのぞき込んで来るのだ。
「隊長、すっごいヤらしい顔ｖ大好きっｖ」
こんな時、自分がどんな顔をしているのか、趣味の良い愛人たちのせいで、森次はよく知っている。
どこがいいのか、未だかつてわかったことがないが、皆同じようなことを言う。
「傷つけちゃったお詫びにぃ・・・こっちも、してあげますねっｖ」
しかし、ここから先は初めての反応だった。
右腿を押さえつけるように乗っていた少女の体が持ち上げられ、濡れた性器を押し当てられていたそこが、ひやりと冷えた。
そうして、ぬとりと糸を引くほど潤ったそこが、森次のものの上に覆い被さって。
「・・・待て」
そこで、森次は彼女を止めた。
「そこの引き出しに、ゴムが入っている」
さすがに妊娠の心配はないだろうが、中に出されると迷惑なのは、身を持ってよく知っている。
「やぁんｖ隊長ってば、紳士〜ｖ」
しかし、少女は無邪気だった。
「でも、大丈夫ですよう。さすがに受胎機能まではありませんし。それより、隊長のいっぱい欲しいですぅ」
「・・・そうか」
そういえば、ヴァーダントも似たようなことを言っていたか。
どんなにコックピットを汚しても、何事もなかったかのように取り込んで綺麗にしてしまう相方を思いだし、森次はそれ以上異議を申し立てなかった。
ぼんやりと見上げた少女の瞳が、嬉しそうに笑むとともに、ぬるりとそのまま飲み込まれた。
そうだろうとわかってはいたが、それでも、そんな機能まであるのか、と驚く。
それと同時に、そういえば、女性に『乗られる』のは初めてだな、と、どうでもいいことを考えた。
自分もまだまだ、と、どこか遠く思ったところで、休まず蠢いていた後孔内のケーブルが、感じる場所を不意に突いた。
「は・・・・っ」
「うふｖ気持ちいいですか？」
加減を知らないのか、知っていてあえてしていないのか。
中のケーブルの動きは、明らかに攻め上げるためのもので。そのまま跳ねそうな腰を押さえつけるように乗った少女の腰は、森次のものを包み込んではゆるゆると蠢いている。
自分も頬を紅潮させ、それでも笑みを崩さない真来梓に瞳を覗き込まれ、森次は喘ぎに開いた唇を、ヒトの言葉のかたちに開いた。
「ああ・・・・そうだな」
「えへｖ」
とたんに浮かんだ満面の笑み。
ヒトにあらざる無邪気なそれに、ああ、彼女もマキナなのだと、この後に及んで森次は納得した。
「もっと、気持ちよくしてあげますねｖｖ」
「っ、あ・・・・っ」
中を抉る動きが激しくなる。
太さが足りないぶん、どこか切ない物足りなさを持つそれは、しかし自由に動きまわって想定しない快楽を与え続け。
そうして、人外の少女も、自分の体を上下に揺すりだした。
中も外も激しく攻め上げられて、我を忘れるその一瞬。
「森次隊長、だーい好きｖ」
聞こえた声に、甘く、苦笑いをした。
「その、すまんな」
不意に、今の上司に当たる男に謝られ。
心当たりを探した森次は、すぐに無表情のまま、ほんの少しだけ声を低めた。
「・・・・そこは、知らない振りをしていて欲しいのですが」
「そうもいかんだろう」
彼女のことは、君に任せきりになっているからな、と、この元敵である世界一の苦労人は、余計な気を回してみせるから。
「あなたは、細かいことには目をつぶって、最後に責任を取るのが役目のはずです」
そう言い切ると、深々とした、ため息をつかれた。
「なるほどな、石神仕込みか」
それは、呆れか諦めか。
「では、頼む」
そう言って話を切り上げ、指令室へ消えた白い背中を見送って、自分は上司に恵まれているな、とそう思い。
森次はとりあえず、先ほどの行為中、ずっと猛抗議だったヴァーダントの機嫌でも取ってやるかと格納庫へ足を向けた。
先に桐山に捕まったが、無視をして、そちらは後回しにしてやった。